フランス文学
パトリック・モディアノ Patrick Modiano
『ある青春』
モディアノ中毒という言葉がフランスにはあるらしい。国民的な作家だということだろう。いや、2014年にはノーベル文学賞も受賞しているし、世界的作家でいいよね。まあ、知らなかったんだけど。
レーモン・クノー(パトリックの母親の友人だったらしい)の勧めで小説を書き始め、処女作を読んだクノーが出版社に推薦し出版。ロジェ・ニミエ賞とフェネオン賞を受賞。
クノーが推薦、っていうので興味を持った。クノーには全幅の信頼を寄せている。(クノーも最近初めて読んだんだけど)
でも今回読んだのはその処女作ではなく、1981年出版の『ある青春』。僕が生まれた年であった。あれから約40年。この小説を読みながら忘れ去られていた青春時代を回顧。大学も中退し(正確には除籍)、バイトしながらただダラダラと過ごしただけだった気もするが、それこそが若さというものなのかもしれない。気怠さ。モラトリアム。なんて美化するのが歳をとった証拠。
しかし『ある青春』の全体を覆う雰囲気そのものが気怠く、そういう風に自分の過去を重ねてしまったのかとも思う。その気怠さのせいか、やけに現実逃避感が強く、このままずっと読んでいたいと思ってしまう文章であった。
多分このへんが『中毒』になる原因なんではないかと勝手に考えている。フランスの人たちもみんな現実から目を逸らしたいのだろう。たまにはいいよね。
そんな僕もモディアノ中毒になってしまったかもしれない。気付けば他の作品も購入してしまっていた。ただあまりハマりすぎると、何もやる気が起こらないなんてことになりかねない、なんて思ったけど、なんやかんやと忙しなくもうそんな風には生きられない。
あれは青春時代の特権だ。
あなたはまだ、若すぎてわからんだろうが… このアルバムを繰って、彼らを次々と眺めると、ぼくは、次から次と打ち寄せては砕け散る、波を見るような気がする… 『ある青春』(白水Uブックス)
- 作者:パトリック モディアノ
- 発売日: 2014/12/08
- メディア: 単行本