-ささやかな胡桃パン-

『海外文学』と日々のたわいもないノート

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

不安定な世界を死者と漂うミステリのふりをした後悔/『イザベルに ある曼荼羅』アントニオ・タブッキ

おおいぬ座の最輝星シリウスからやってきたという男が、ある女性を探し求めて彼女と関わった人たちの記憶を頼りに、ポルトガルからマカオ、スイスアルプスへと世界各地をふわり漂う。 イザベルに: ある曼荼羅作者:アントニオ タブッキ発売日: 2015/03/25メデ…

生きづらさや閉塞感を感じているとき必要なのは文学である/『よそ者たちの愛』テレツィア・モーラ

ドイツ文学 テレツィア・モーラ Terézia Mora 『よそ者たちの愛』 みな苦しみもがいている。 よそ者たちの愛 (エクス・リブリス)作者:テレツィア・モーラ発売日: 2020/03/25メディア: 単行本 テレツィア・モーラ Terézia Mora おまけ 過去への執着、郷愁、理…

自分ではない誰かへ書くということを考えたけれども結局ただ続けるしかないのかと思いでもまた…

なにか小説を読みたいなと思って、まあ「売れてるってことは面白いってこと」だろうと、とりあえずベストセラー小説なんぞ買って読んでみるが、ふと気付けば部屋の片隅でホコリをかぶってしまって寂しそうに…。あるよね。 小説を読みたいけど、なかなか読み…

ダメ人間たちに映し出されるアメリカの苦悩/『十二月の十日』ジョージ・ソーンダーズ

アメリカ文学 ジョージ・ソーンダーズ 『十二月の十日』 十二月の十日作者:ジョージ・ソーンダーズ発売日: 2019/12/11メディア: 単行本 この短編集の登場人物たちが「ダメ人間」であるというのならば、紛れもない、僕も間違いなく「ダメ人間」である。だから…

『くるみパンの本棚』はじめました

二足三文で売るくらいなら… どんな本屋か 二足三文で売るくらいなら… 今まで僕は読み終えた本を、中古本屋さんに毎回「こんなに安いのか…」とぶつぶつ愚痴をこぼしながらも、売ってしまっていた。 まあ、その微々たるお金を、また本を買う資金として活用して…

美しくて哀しくて愛くるしいおじさんのお話/『ひとさらい』ジュール・シュペルヴィエル

フランス文学 ジュール・シュペルヴィエル 『ひとさらい』 ひとさらい (光文社古典新訳文庫)作者:ジュール シュペルヴィエル発売日: 2013/11/08メディア: 文庫 見え見えな僕らの欲望 キモい僕らの欲望 シンパシーと擁護 ひとつ屋根の下、自分の隣の部屋には…

となりの移民/『西への出口』モーシン・ハミッド

西への出口 (新潮クレスト・ブックス)作者:ハミッド,モーシン発売日: 2019/12/24メディア: 単行本 イスラム教を知る 移民は近くに 穏やかに 書き出しがこんな感じ。 難民で膨れ上がってはいるが、おおむね平穏な、少なくともあからさまに戦争にはなっていな…