-ささやかな胡桃パン-

『海外文学』と日々のたわいもないノート

芸術家たちとの夢遊『夢のなかの夢』アントニオ・タブッキ

普段あんまり夢って見ない。きっと忘れてるだけなんだろうけど。妻は朝起きるたびに、見た夢の話をする。僕はそれにぼんやり耳を傾け妻の心を聞く。

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夢っていうのはいつも支離滅裂で断片的だけど、そこに何かしらの真実が隠されているような気がする。だから多分、その人を知りたいのならば、その人が見た、もしくは見たかもしれない夢を覗いてみればいい。

詩人や画家、作家。そんな芸術家たちが見たかもしれない夢。タブッキはその彼らが見たかもしれない夢を想像し、愛娘からもらった手帖に綴った。それがこの『夢のなかの夢』という一冊の本になった。

勿論、ポルトガルの詩人ペソアおじさんも出てくる。もはやタブッキはペソアの別人格のうちのひとりなのかもしれない。そう思えるほどに、タブッキはペソアだ。つまり、二人とも僕が大好きな作家、芸術家だということであって、いやもしかしたら僕もペソアでありタブッキなのかも。なんて思わなくもない。多分小説を読むというのはそういうことなんだろう。

『夢のなかの夢』の中、20人ほどの芸術家たちの夢が語られる。ラブレーランボーチェーホフロルカミケランジェロにスティーヴンソン…などなど。他に知らない人物もいた。そして最後を飾るのはフロイト。ああなるほどな、というところで読み終わり夢から現実へ。…ん、現実?夢?わからないほど真実。

なんかタブッキ的に解釈した芸術家紹介本のようでもあった。人を語るのに「夢」って最適だね。僕もあなたも本当の自分はきっと夢の中に。

夢のなかの夢 (岩波文庫)

夢のなかの夢 (岩波文庫)